文化祭で劇を演じると聞くと、フィクションに出てくる演劇部の影響で「体育館」をイメージする人が多いと思います。実際のところはどうなのかというと、私は未だかつて、体育館で舞台を上演している演劇部を見たことがありません。
もちろん体育館が使用されることもあるのでしょうが、私が見るのはいつも教室(視聴覚室などの特殊教室を含む)か講堂です。

公演回数は一日一回もしくは午前午後の二回で、内容的には時期にもよりますが地区大会で演じる舞台のプロトタイプが多いですね。
雰囲気は大会のようにピリピリしておらず、部員の友人や家族たちが醸し出す温かい空気に包まれているというのでしょうか。皆好意的なのですこぶる反応がいいです。地区大会では、タイミングとか練りに練ったであろうギャグシーンに一デシベルの反応もない光景を結構目にするので、"ホーム"のありがたみがよくわかります。
上演後は部員たちが並んでひとりひとりお礼の挨拶をすることが多く、彼らの人となりを知ることができますし、客席の方にきて気さくに会話に応じてくれるので、撤収作業に忙殺されている大会時と比べれば遙かにコミュニケーションが取りやすいでしょう。差し入れを渡せる余地も十分あり、特定の演劇部のファンであれば抑えておきたいイベントといえます。学校によっては文化祭公演で三年生が引退することもあるのでなおさらです。
そもそも、高校の文化祭っていつやってるの?
だいぶ古い話になりますが、私が通っていた高校では11月ぐらいに文化祭が行われていました。よって、「文化祭は秋!」という刷り込みがあるのですが、現在の神奈川では6月に実施している学校が多いんですよね。ほかの地域はわかりませんが、秋というイメージにとらわれない方がいいと思います。
具体的な実施日を知るには学校のウェブサイトにアクセスし、年間予定表を閲覧するのが確実です。問題は演劇部の公演が何時何分に校内のどこで行われるのかということです。
学校が文化祭のパンフレットをサイトにアップしてくれればいいんですが、そこまで親切なところはまずないので、ツイッターを頼りましょう。演劇部のオフィシャルアカウント、もしくは部員の誰かが予定をツイートしてくれていれば、"学校名+文化祭+演劇"辺りのキーワードで拾えるはず。
文化祭は二日間開催のことが多いので、どうしてもわからない場合は一日目を捨てて二日目に賭ける手があります。一日目が終了した時点で「明日の公演は何時から~」といった情報が出てくることがありますし、ネットに情報がまったく出てこなくても学校が近くにあれば、一日目の適当に時間に行ってパンフレットをもらってくればいいのです。
生徒と無関係の一般人が学校の中に入れるの?
今のご時世、文化祭とはいえ生徒と関係ない人間が学校の中に入れるのか心配する人もいるかもしれませんが、まったく問題ありません。学校は地域住人から信頼と理解を深めてもらうため、年に数回、校内を開放するイベントを設けており[1]、文化祭はそのひとつだからです。偉い人の子息が通っている学校はともかく、普通の学校で一般人の来場を断るところはまずないといっていいでしょう。ドレスコードもないので、おそらく、女子高に無精ひげを生やしたおっさんが上下ジャージで行っても普通に平気だと思いますよ。

私はジャージでは行かないものの、いつも一人なので不審者感を存分に醸し出しているはずですが、さすまたを持った学校職員に追いかけられた経験はなく、無事に笑顔がまぶしい女子高生からパンフレットとスリッパを受け取っています。どうでもいい話ですが、あの屈託のない笑顔を見ると自分がすごくまともな人間と認識されているように思え、電車内で自分の隣に若い女の子が座らなくなってから久しく経つことを忘れちゃいますね。
演劇部への差し入れはなにがいい?
上演終了後、部や個人に差し入れをしたい場合、どういったものが好まれるでしょうか。よくいわれることですが、"個別包装された日持ちのする食べ物"が無難です。カントリーマアムとか不二家ホームパイとか、大袋が250円ぐらいで売られているあの辺。
大会を通じてファンになったなどの理由で演劇部への思い入れが強い人だと、爪痕を残したいみたいな気持ちが出過ぎて気合いの入った差し入れを考えるかもしれませんが、普通が一番です。
どうしても爪痕を残したいなら手書きのメッセージを贈ってみては? カントリーマアムの大袋に「昨年の地区大会で○○高校演劇部の芝居を見て感動したので、文化祭公演を見にきました」などのメッセージを書き込んだカードを添えれば、もう爪痕バリバリですよ。

以下、私の勝手な推測ですが、演劇部員は自分たちの舞台がどう思われているのかすごく知りたがっています。特に関係性のない人から見てどうなのかを。大会では観客が感想を書くためのメッセージボードが用意されますが、記入するのはだいたいOB&OG、友人、他校の演劇部員といった、ようは身内だけなんです。感想の内容を含めてすべてが想定内で、だから安心といえますが手応えはあまりないでしょう。
文化祭公演は典型的な内輪イベントですが、それゆえに一般人が「去年の舞台を見てファンになった」という理由で訪れてくれたらすごく嬉しいでしょうし、自信になるはずです。ただしイケメンに限る。いや、イケメンじゃなくても大丈夫。多分。
クラスの出し物として高校演劇の芝居を上演するのは有り?
最後に、どうもこのページには「クラスの出し物として文化祭で劇をやりたい」人がちょいちょいアクセスしている気がして、多分、とっくに即バックしていると思いますが、一応、高校演劇と関連づけた話を書いてみます。
高校演劇は脚本数が多い上に入手も容易で魅力的に映るかもしれません。ただ、私からするとクラスで演じるのは不適当だと思えます。理由は以下の三点です。
- テーマが重い、もしくは生々しすぎる(いじめ、差別、思春期ならではの悩み)
- 上に付随してエンターテイメント性に欠ける
- キャストの人数が少ない(20人以上出演できる舞台となると一気に候補が減る)
以上を踏まえた上で、あえて一つ候補を挙げるなら、
『もしイタ ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら」』
でしょうか。
04:38
私は高校演劇の話をあまり知らないため、上記作品が一番向いているとはいいませんが、話の完成度が高くエネルギッシュで、演技の面でも見所が多くて素晴らしいと思っています。演劇部ではなくクラスでこれを完璧に演じたら、いろいろすごすぎて拍手がしばらく鳴り止まないのは間違いないところ。
ただ、現実的には難易度が高すぎて少ない稽古時間でうまくやるのは難しいですね。
懸念はそれだけではありません。平均的な演劇部が存在している学校で『もしイタ』をクラスが極めて上手に演じた場合、間接的に演劇部と殴り合いになり、打ち負かしてしまいます。
高校演劇とまったく関係のない作品であれば、「あれはうちらがやっているのとは違う」という言い訳が立ちますが、『もしイタ』は高校演劇の象徴的な作品のひとつです。クラスに向けられた賞賛を耳にした演劇部員の心はズタズタに傷つくのではないでしょうか。
YouTubeを見てみると、少ないながらも高校の文化祭で上演された劇がいくつか出てきますが、商業作品、あるいは童話をベースにしたオリジナル作品が目立ちます。演劇部の公演とクラスの公演をうまく並び立たせたいなら、そうした話を選択をするのが無難といえるでしょう。
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