はい、結構あります。高校演劇は地区大会→県(都道府)大会→ブロック大会→全国大会と続く本筋のイベントだけではなく、地区の高校演劇連盟などが主催する独立したものも行われ、この手のイベントには賞が設けられていないことが珍しくないのです。
春季発表会(地域によって名前は異なる)は三月から四月にかけて行われる地区、あるいは県レベルでの発表会です。よく"春フェス"と称されますが、春季全国大会(春季全国高等学校演劇研究大会)もそう呼ばれるので、横浜で春季全国大会の取材をしたとき、関係者がどちらの春フェスの話をしているのかややこしくて混乱しました。
"春季全国大会"ではすべての参加校が地区大会以降に演じている舞台をそのまま行いますが、"春季発表会"では新二年生と新三年生による新作が上演されることがほとんどです。ちなみに、神奈川では四月に開催された場合であっても新入生が参加することはありません(稽古をする時間がないため?)。

芝居の内容は、春季発表会用の新作のほか、秋の地区大会で演じる舞台の試作や複数の演劇部による合作、一つの演劇部がAチームとBチームに分かれて競作するなどバラエティに富んでおり、昨年の地区大会で行った舞台の再演もたまにあるのかなといった感じですね。
新三年生の引退公演になることも
特筆すべきなのはこのイベントで新三年生が引退することもあるという点です。高校生活が丸々一年残っていて、しかも、実力、経験ともにこれからピークを迎えるというところでなぜいきなり引退してしまうのかというと、全国大会に至る道のりの特殊性があります。
地区大会から全国大会までは以下のように進んでいきますが、

途中で年度をまたぐため、三年生は留年でもしない限り、全国大会には出られないのです。さらに最後まで勝ち進んでも必ず8月で終われる高校野球と違い、高校演劇は実質的に9月、10月からスタートするので、せめて地区大会だけでも出場したいと思っても、受験との兼ね合いで難しい面があります。つまり、春以降、部活動を続けても結局、その年の大会には出られないとなってしまうのです。
受験勉強と稽古を両立して地区大会に出る、でもブロック大会はさすがに無理という三年生がいた場合、彼(彼女)の意向を汲むことは規約上なんの問題もありませんが、もし実際にブロック大会まで進んだら代役を立てなければならず混乱するでしょう。だったら、地区大会以降は二年生を最上級生としたチームで挑んだ方がいいというのが、春季発表会で三年生は引退となる一番の理由です。
ただ、上記の理屈はどちらかというと"全国まで行っちゃうかもしれない強豪校"もしくは"三年生にはできるだけ早く受験に専念してほしい進学校"の理屈であり、すべての学校の三年生が全員、春季発表会で引退するわけではなく、冬まで活動を続ける人もいます。
春季発表会は非公開のイベント?
春季発表会のような独立したイベントは、ネットを使ってかなり調べても「どうやら○月○日にあるらしい……」ぐらいの曖昧な情報しかわからないこともあります。
一度でも行ったことのある人なら「高校演劇ってそんなもの」と泰然自若としていられるでしょうけど、初めて行く人だと「こんなに情報が少ないってことは、もしかして非公開のイベントなのでは?」という不安を抱く人もいるかもしれません。
実際、演劇部が校内で自主公演を行う場合、
演劇部とは無関係な人間が来ても追い返すことはしないが、(面倒くさいことになるかもしれないから)できれば来てほしくない……だから積極的な広報を控える
みたいなことはあるようです。
ですが、春季発表会のような複数の学校が会場を借りて行うイベントの場合、ごくまれな例外を除き一般人の入場を消極的にでも拒否することはありません。
一般人が初めて高校演劇を見に行くにあたり、一番不安なのは「怪しく思われたら嫌だな」ではないでしょうか。私も当初、「入場時に『なんだこいつ?』って目でじろじろ見られたらつらいな」という気持ちがありました。でも杞憂でした。
ママチャリに乗っていると、「立ち漕ぎをしていたから」などの不可解な理由により高確率でパトカーに止められて職質を受ける私にでさえ、女子部員が屈託のない笑顔でパンフレットを渡してくれたのです。そもそも入場者リストの項目に「学生」「父兄」「一般」と並んでいるわけで、一般人が来ることは想定内。よって、堂々と入場していただいて大丈夫です。春季発表会の情報が少ないのは一般人の来場を阻止するためではなく、単に関係者が広報の必要性を感じていないからだと思われます。
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