確かに「チケットとかないよ~そのまま入ってきちゃっていいよ~気軽にきていいよ~」というのはなにかしら罠を感じさせるので怖いですよね。高校生までなら、「まあ、そうなんだろうな」と額面通りに受け取るかもしれませんが、大人はこうした誘いの中にしばしば地雷が含まれていることを、経験上、知っています。
でも、高校演劇は言葉通り手ぶらでふらっと入れて、知らない人に話しかけられることもなく、いつでも好きなときに帰れるし、そのあと「演劇に興味があるなら~」みたいな勧誘電話がかかってきたり、ダイレクトメールが送られてくることは100パーセントないので安心してください。そもそも電話番号やメールアドレスを聞かれること自体ありません。
劇場に入るとまずどういう対応をされる?

どのようなイベントでも必ず受付があるはずなので、そこへ行きます。応対してくれるのは、大抵、当日出演する学校以外の演劇部員たちなので怖くありません。受付で最初に行うのは名簿に名前を書くことです。地域によっては、「あなたの立場を『学生』『保護者』『一般』」の中から選んでください」みたいな選択肢があるので該当するものに丸をつけましょう。

私事ですが、ある地区大会の名簿に『学生』『保護者』のあと、"一般"ではなく『青年』という選択肢が記載されており、係の女子高生に「丸をつけられるところがない」と言ったらかなり笑ってくれて嬉しかったのですが、どうでもいい話ですね。
ちなみに一般的な演劇や音楽ライブと違い、荷物のチェックをされることはありません。
名簿に必要事項を書き終えると、当日のスケジュールや演劇部のプロフィールが載っているパンフレット、そして大会以外のイベントではあわせてアンケート用紙を渡されます。

全国大会および春季全国大会(春フェス)の受付方法は少し異なる
大きな大会だと受付方法が異なります。
たとえば、全国大会および春季全国大会(春フェス)では事前に整理券が発行され、所持している人は優先入場の列、所持していない人は別の列に分けられます。普通の大会を見に行くノリでなんの準備もせずに会場に乗り込むと、空席待ちになりかねないので注意しましょう。
春季全国大会は2月頃、全国大会は6月頃から整理券の受付が始まるので、見に行くつもりであれば必ず応募してください。
ちなみに私が横浜の春フェスへ行ったとき、運営は来場予定者名簿を準備していて私の名前が名簿に記載されているかチェックを行っていましたが、これは関係者への取材を申し入れていたからかもしれず、一般客でも同じことが行われるのかはわかりません。
上演開始時間に遅れて到着したら?
高校演劇はミュージシャンのライブのように開始時間が押すことはまずないです。予定時間になったらほぼ確実に幕が上がります。
そのため、開始時間を一分でも過ぎて会場に到着するとその時点で途中入場が確定しますが、焦ってすぐに入ろうとせず受付にとどまって、どの入り口を使えばいいのか係員の指示を受けてください。というのは、劇場によって途中入場用の入り口が決まっているからです。

上の図は劇場を上から見たものですが、大抵、複数の入り口が存在しており(上記例ではステージ横A、ステージ後方B)、ステージから離れているBが途中入場用の入り口になります。
係員の指示を待たずにステージ横のAから入ってしまうと芝居の雰囲気を壊してしまうことになりかねません。
受付通過後
受付周辺にはロビー(ホワイエ)があり、上演開始まで待つことができます。貴重品や大きな荷物を持っていたら、この時点でロッカーに預けるのがいいですね。会場によってはカフェが併設されているので、リッチな人はコーヒーとケーキを楽しむのもいいでしょう。
場内に入ったら
上演開始5分前になると"一ベル"と呼ばれる音[1]が鳴り響くので、遅くてもこの段階で場内に入りましょう。
一部のイベントを除いて全席自由なので、中に入ったら自分で席を選ぶことになりますが、地区大会だと強豪校が出場する日や最終日を除き、多分ガラガラなので好きなところに座れます。おすすめは前にも横にも通路がある席ですね。足を伸ばせるし、トイレに行くのも簡単です。
席についたら、とりあえずスマホの電源を切ってください。
待っていると、再びブザーが鳴ります。これは本ベルと呼ばれるもので開演の合図です。上演校を紹介するアナウンスが続き、まもなく暗くなります。
劇場の中ってどんな感じ?
○○県民ホールのような多目的型と専用劇場とで細かな違いはありますが、それぞれびっくりするようなものが備わっているわけではないです。ただ、個人的に「へえ」と思ったものはいくつかあるので、挙げてみましょう。
二重扉

防音のためだと思いますが、劇場の中に入るための扉が二重になっていることが多いです。そして、押しても引いてもとにかく重い。小学生の女の子だと開けるのに相当苦労するでしょう。
馬蹄形の場内

○○県民ホールだとか××市民会館だとかは、四角いの建物の中にステージと客席があるイメージですが、専用劇場の場合、客席側だけ半円になっていることが多くて劇場を俯瞰すると馬の蹄っぽく見えます。この形状のおかげで端の席からでも観劇しやすいです。
高い天井

音を響かせるためか、やたらと天井が高いですね。客席側が半円になっている専用劇場だと、「今、自分は筒っぽい場所の底にいるな」って感じがします。
ステージにいろいろな幕がある

学校の体育館にあるステージの幕はせいぜい緞帳一枚ですが、専用劇場だと緞帳以外にも下りてきたり、サイドには黒とか白の幕が何枚も見えて、とにかく幕の充実ぶりがすごいです[2]。
どんな人たちが客として見に来ている?
観劇自体が初めてだと客層も気になることでしょう。自分が場違いな人間に思えたり、ほかの客から疎外感を受けるとあんまり楽しめないですもんね。
まず、大雑把に客の年齢層を比率で表すと、私が行く地区大会では「学生 7」に対して「成人 3」といった感じでしょうか。あなたが成人だと受付でロビー周辺を見渡した時点で、「うわあ、学生ばっかり……」(ある意味当然ですが)と変なプレッシャーを感じるかもしれません。
「成人 3」の内訳は演劇部関係者多めって感じです。幕間ではそこかしこで客同士による挨拶が行われています。そのほか、「この人、いつでもどこでも見かけるな」と感じる、生粋の高校演劇ファンが点在しているように見受けられますから、層はわりと固定されているいえるかもしれません。
「だったら一見の自分が行ったら思いっきり浮いてしまうんじゃ」と恐れおののく人もいるかもしれませんが、それは杞憂です。なぜなら、アイドルのライブなどでよく見受けられる"ファンが醸し出す独特なノリ"が高校演劇には一切存在しませんし、常連と一見で対応に差をつけられることもないからです。感覚的には映画館で映画を見るのと大差ありません。
「中年男性が一人で行くと警戒されるのでは」とか、「小さい子供を連れて行くと目立つのでは」なんていう心配も必要なし。そもそも誰も気にしてませんし、目にとまっても、学校の関係者か父兄にしか見えないです。
上演終了後
舞台が終わったあと、強制的に退場を求められることはありません。席に座ったまま、次の高校の舞台が始まるのを待っていてもいいですし、トイレに行ってもいいでしょう。劇を見て感銘を受けたのであればロビーへ行ってメッセージボードと呼ばれる板に感想を書くと喜ばれます。

大会によっては、扉付近でいきなり学生に声をかけられるかもしれません。これはナンパ目的ではなく、演劇連盟から与えられた役割の一つとしてボランティアの演劇部員が舞台の感想を聞きにきただけなので、思うところがあれば答えてあげるといいでしょう。
退出
どのタイミングで帰ってもなにもいわれません。受付にいる学生もスルーしてくれます。入場時にアンケートを渡されていて、もし記入したのであれば係の学生に渡すか、もしくは回収用の箱に入れてください。

再入場
午前中、ひいきの学校の舞台を見てからいったん退場し、午後、表彰式が始まる前に再入場するといったことも可能です。
受付の学生は入れ替わっている可能性が高く、その場合、再入場時には再び名前を書くようにいわれますが、「午前中に来ていて記入済み」といえば、それ以上なにもいわれませんし、パンフレットを渡してくることもありません。
ちなみに昨日きて今日もきたという場合は、前日に名前を書いたからといって当日の受付で名前の記入が免除されることはないので、しっかり書くようにしましょう。
中学演劇にはトラップが……
最後にひとつ。"演劇部"は高校の専売特許というわけではなく、数は少ないけど中学校にもあるんです。確か2017年、横浜の青少年センターで中学演劇の全国大会が行われると知り、どんなもんなんだろうと行きました。事前に料金やチケットについてチェックし、入場無料でチケットは不要と確認した上で、です。
「そうか~、高校演劇の地区大会とか県大会とあんまり変わらないシステムだなあ」
と思いながら、青少年センターの入り口を通り、受付で名前を書いて通過しようとしたらところ、
と男性の係員にナチュラルな口調でいわれました。

あまりにもナチュラルすぎたため、その500円ってどっから出てきたと思いつつ、
と脊髄反射気味に返したところ、彼は周囲の人たちと顔を見合わせて「あれ、どうしよう」みたいな感じになり、
「あの、すみません、寄付という形で500円いただいております(以下、ものすごく丁寧な説明)」
と答えてくれた、まあ、そんなことがありました。というわけで中学演劇は必ずしも無料とは限らないのでご注意ください。あとで聞いた話だと高校と中学とでは行政から補助されるお金に違いがあるとか、そういうことみたいです。
あのとき、私の対応をしてくれた男性係員の方、詳しい事情を知らず、不満がにじみ出た雰囲気を醸し出してあわてさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。じゃあトラップって書くなという(以下略)
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