このアンサーは主観で占められています。パンダ(白黒熊)しか見たことのない人間がクマ全体を語っているようなレベルなので、たっぷりと割り引いて読んでください。

はい、少なくとも神奈川では可能です。
私はいつも後方の席で両腕を背もたれに投げ出し、短い脚を組み、アクエリアスか生茶をぐびぐび飲みながらふんぞり返って聞いていますが、「後ろに変なおじさんが残っている……」と女子部員たちに何度も振り返られ、険しい表情を浮かべた劇場の男性スタッフから退場を促された、といったことはただの一度もありません。
ほとんどの一般客は帰り、演劇部の関係者だらけになるので居心地の悪さを感じる人はいるかもしれませんが、誰も周囲のことなんて気にしてないので大丈夫です。
講評の流れ
講評が始まるのは最終上演校の舞台終了後、20分から30分ぐらいあとですね。上演中は客席最前列に座り、脚本をめくりながら舞台を見ていた審査員が、いったん控え室に引っ込んだあと再登場します。

審査員を務めるのは別地区の演劇部顧問、劇団代表、演出家、役者、演劇学科の講師といった人たちで、連続で同じ地区の審査員にならないよう、毎年、シャッフルされている感じです。組み合わせはだいたい「年齢差のある男女(たとえば50歳前後の男性と30歳前後の女性など)」になりますが、これは確か内規としてそうなっているからだったかなと(関東高等学校演劇協議会のサイトで読んだ記憶がある)。
審査員の性別と年齢を分ければ、男性、あるいは女性なら共感できる話、若い人向けの話、中高年の心情に刺さる話など、特定の層に評価が高そうな舞台を見落とさずに済みますからね。
講評時間は一校につき10分程度で、神奈川の地区大会だと二人の審査員が5分ずつ交互に喋ります。出場校が多い地区だと講評が始まった時点で午後7時を回っていることが珍しくなく、そのせいか時間厳守をかなり厳密に指示されているようで、人によってはタイマーみたいなものを用意し、時間がきてチャイムが鳴ると名残惜しそうに切り上げるのが面白いです。
講評は舞台本番に次ぐエンターテイメント
講評の内容ですが、基本的にはある審査員が褒めるとほかの審査員は問題点を指摘するといった風にバランスを取っているように見えます。おそらく、控え室でなにを話すのか打ち合わせをしているのではないでしょうか。ただ、審査員の組み合わせとパフォーマンスによっては全員から糞味噌にけなされただけで終わる、みたいな学校もあるので、高校生にとっては厳しい現実を学ぶいい機会でしょう。
私のように高校演劇に興味があり、創作をする人間にとって講評はとても楽しいです。性格の悪さを露呈しますが、舞台を見て「それ、おかしくない?」と感じたシーンに審査員が言及してくれると、「そう! そうなんですよ! よくぞ言ってくれました!」とすっきりします。
審査員は演劇に詳しくても感想を述べるプロではないので、正直、「ん?」という講評もありますが、その場合、今度は権威側に対してつっこめる楽しさが生まれるので、全部ひっくるめてエンターテイメントですね。
また、個人的に舞台よりも講評の時間に"青春"を感じるのです。特に講評される順番が回ってきたときの演劇部員による揃った挨拶。

女子多めの高校生の一団がでかい声を揃えて挨拶しているだけなのに、こんなにもキュンとくるのはなぜだろう……。
なお、講評を楽しむには一つ条件があります。それは、"当日上演される舞台をできるだけ多く見ること"。見ていない舞台の講評を聞くのは苦行に近いです。たとえるなら、友達三人で遊んでいるとき、自分以外の二人が自分の知らない話で盛り上がっているのを黙って聞いている感じ、でしょうか。
講評を聞けば審査結果が予測できる?
講評を聞きたい人の中には、応援している学校が代表に選ばれるか審査結果が出る前に判断したいからという理由を持つ人もいるかもしれません。
確かに講評を聞くと審査結果が見えてくる気になりますが、そんなに単純ではないのです。講評で糞味噌にけなされた学校が代表に選ばれ、褒められた学校が落ちることもあります。文章の世界でもそうですが、けなされるのって必ずしも「全然駄目!」ってことじゃないんですよね。
高校生が作った舞台には、すごく"惜しい"ものが少なからず存在します。根幹のアイデアやセンスは光っているんだけど、使い方、使いどころを間違えているといったものが。そういう芝居はインスピレーションが刺激されるから、審査員もいろいろ言いたくなるんでしょう。
本当に駄目なものは手のつけようがないから無難なことを口にして終わり。その"無難なこと"が世間一般での褒め言葉なら高校生は素直に喜んでしまうかもしれませんが、実は……というオチです。
それと、講評は相対評価ではないので、けなしておきながら最優秀賞を与えることは矛盾にはなりません。
「私はA高校の舞台を見てよくないと思った(講評)」
と、
「上演作品の中から一番優秀なものを選ぶならA高校の舞台(審査)」
は問題なく並び立ちます。
講評を聞くにあたって知っておいた方がいい演劇用語
講評では聞き慣れない言葉がちらほら出てきます。知らなくても前後の話でだいたい想像がつきますが、せっかくなのでいくつか挙げておきましょう。
上手(かみて)と下手(しもて)
上手は客席から見てステージ右側、下手はステージ左側のことです。審査員がどのシーンのことをいっているのか示したい場合に、「○○さん(役名)が下手から出てきたとき~」といった感じで使われます。
既成脚本と創作脚本
脚本集などに既に存在する脚本は既成、書き下ろされた脚本は創作になります。より詳しく知りたい場合は以下の質問を参照してください。
既成脚本の場合はどこ(ネット or 本)で見つけたのか、創作脚本の場合は誰(顧問 or 部員)が書いたのかを審査員は聞きたがりますね。そして、顧問が書いたとわかるとそこで脚本に対する言及が終わる……(多分、部員の前で恥を欠かせないようにという配慮と、打ち上げの席で伝えればいいかという割り切り)。
潤色
潤色とは「もともと脚本として存在していたものを、自分たちが上演するためにアレンジする」ことをいいます。ようするにリメイク? ちなみに脚色は「小説や漫画など、脚本ではなかった原作を脚本にすること」らしいです[1]。
「潤色ってあるけど、潤色したの誰?(手を挙げさせる)」って感じで使われます。
暗転
ステージを含めて場内の照明をすべて消し、シーンやセットを変えることです。
私はそれほど気にならないんですが、審査員はお気に召さないようで「暗転が多すぎる!」とよく文句をいってます。「なにもない時間を何度も観客に過ごさせるな」ってことなんじゃないかなと。
マイム
パントマイムのことです(大抵の審査員は"パント"を略す)。パントマイムというと私はすぐ中村ゆうじ[2]を思い出すんですが、高校演劇の場合、彼のように芸として魅せるマイムではなく、食べているふり、飲んでいるふり、といったものになります。ステージ上は(多分)飲食厳禁で、役者がスナックの袋を出そうがペットボトルを出そうが全部フェイクなのです。
02:45
ホリゾント

ステージ後方に白い幕があり、そこに照明を当てて時間表現などを行います[3]。幕は「ホリゾント幕」、照明は「ホリゾントライト」が正式名称ですが、幕の方だけ指して「ホリゾント」と呼ばれることが多いです。
バミる
役者がどこに立つのか示すため、ステージの床にテープを貼ることです。
最後に、講評について下記のQ&Aでも言及しているので興味がございましたらご一読ください。
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